ケミカルインジケータ(Chemical Indicator:頭文字を取ってCIと呼ばれています)は、滅菌を行う際のモニタリング方法の一つとして世界各国の医療・医薬の分野で使用されています。弊社ではこのCIの開発から製造までを一貫して行っていますが、本コラムではそのCIについて、複数回に分けて少し詳しく紹介していきたいと思います。
主に医療施設で滅菌時に用いられるケミカルインジケータ(CI)は、以下の通りタイプ1からタイプ6まで、6つのタイプに分類されています。
前回は 包装内部用インジケータ(タイプ3~6) について、
〇 ISO規格上では、タイプ毎に「反応する重要プロセス変数の数」が異なること
〇 販売されているタイプ4~6は、全ての重要プロセス変数に反応するものが主であり、反応する数のみでは実質上、分類できないこと
をご紹介させて頂きました。
今回は、タイプ4~6を分類するもう一つの要素に触れていきたいと思います!
この分類にあたり、SVと呼ばれる用語の理解が必要となります。
SVは、Stated Value(直訳すると “宣言された値” )の頭文字を取ったものですが、平たく言うと
CIのメーカーが “このCIはこの条件で合格を示します!” と宣言する値となります。
例えば、こちらの弊社のタイプ4のAC用滅菌カードでは
表記されている “121℃_20分” の条件で合格を示すものとなっており
この ”121℃_20分“ が Stated Value : SV となります。
続きまして、弊社のタイプ6のAC用滅菌カードの例を挙げさせて頂きますね。
こちらのSVは …… 134℃_8分 になります!
この滅菌カード、人の顔デザインになっていて、右目がインジケータ、左目が参照色(リファレンスカラー)、
鼻がSVとなっています(顔デザインになっていること気付かれていないケース多々ありますが 汗)
SVは 「この条件に達するとCIは合格を示しますよ」 という条件になりますが、逆に言えば、その条件に達しなければCIは不合格を示す、ということになります。
より正確に言えば、包装内部用CIは
-SV(滅菌温度)に対してxx℃足りていない条件
-SV(滅菌時間)に対してxx%足りていない条件
で処理された際に、きちんと不合格を示さなければならない とISOで規定されています。
そしてこの幅(xx℃、xx%)が、各タイプで異なっています。
高圧蒸気滅菌用CIに関するISO規格(ISO11140-1)では以下のようになっています。
このようにSVが包装内部用CI(タイプ3~6)の分類に関わってくるのですね。
例をお示しします。先ほどご紹介したタイプ4の滅菌カードはSV:“121℃_20分” となりますので、
この滅菌カードが不合格を示さなければならない条件は、SV -2℃(マイナス2℃)、SV -25%(マイナス25%)、より ”119℃_15分” となります。
実際に弊社の評価装置で試験した結果がこちらです。
不合格を示さなければいけない119℃_15分の条件ではインジケータの変色が不十分で(参照色(リファレンスカラー)となる外枠部分の茶褐色よりCIの変色が薄く)、不合格となっていることが分かります。
なお、CIの変色評価に用いる装置はCIER(Chemical Indicator Evaluating Resistometer)と呼ばれ、通常の滅菌器とは異なるCI評価用の特別な装置となっています。このCIERについてはまた後日、詳しくご紹介しますね。
…話を戻しまして、
例えると、CIが合格となる的(条件)があったと仮定した場合、タイプ3,4が最も的が広く大きい的、逆にタイプ6の的が最も狭く小さい的といったイメージになります。
この的の大きさを変色精度と捉えれば、タイプ3,4 < タイプ5 < タイプ6の順で精度が高くなっているといえます。
ここでご注意頂きたいのは、上記で述べた精度はあくまで “SV” に対する精度である ということです。
SVは滅菌条件として十分な値が設定されますので、タイプ4であっても日々の滅菌工程の確認において安心してご使用頂けるものとなっています。
上図で少し触れているのですが、タイプ4,5,6のそれぞれの違い、実は精度だけではないです..が
その話はまた別の機会にできればと思います!(かなりややこしくなってきました汗)
今回は、最後に弊社のタイプ6の滅菌カード(SV: 134℃_8分) の変色例を少しご紹介したいと思います。
前回のコラム(Vol.2)にて、タイプ6は全ての滅菌条件に反応することをお伝えいたしました。
さて、ここで
高圧蒸気滅菌における条件は何だったでしょうか…?
…そうですね。温度、時間、蒸気の有無 でした。
(コラム掲載の間隔が長く空いてしまいました 汗 スミマセン)
この「蒸気の有無」について少しご紹介したいと思います。
下図をご覧ください。左列は飽和蒸気(134℃_8分)にばく露した際の変色、右列は恒温槽(高精度なオーブンをイメージして頂ければ)にて、134℃_8分の乾熱処理(蒸気のない熱処理)をした結果となります。
ご覧のように左列(飽和蒸気)ですと、CIは完全に変色し合格を示しております。一方、右列(乾熱)を見て頂くとCIはほとんど変色していないことが分かります。
滅菌カードが蒸気の有無を検知し不合格を示した結果といえます。
さて、今回は包装内部用CIにおいて大切な用語であるSV : Stated Value(この条件でこのCIは合格を示します!とメーカーが宣言する値(温度・時間))を中心にお話させて頂きました。
次回からは一旦、包装内部用CIから離れ、タイプ2(ボウィー・ディックテスト用インジケータ/テストパック)のご紹介に入っていきたいと思います(いよいよですね)
ではまた!