UV(紫外線)硬化樹脂とは?メリット・デメリットから種類、用途まで解説

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UV硬化樹脂は、光を当てるだけで瞬時に硬化する画期的な材料として、現代の様々な産業で不可欠な存在です。

本記事では、UV硬化樹脂がなぜ「速く固まる」のかという基礎知識から、環境負荷低減や省スペース化といったメリット、課題、用途まで解説します。


1. UV硬化樹脂とは

UV(紫外線)硬化樹脂とは、特定の波長の紫外線を照射することで、液体から固体へと瞬時に硬化する特殊な樹脂材料を指します。

この硬化プロセスは「光重合」と呼ばれ、樹脂中に含まれる「光重合開始剤」が紫外線を吸収することで化学反応が始まり、分子が結合して高分子化することで硬化が進行します。

UV硬化樹脂は、その優れた特性から、接着剤、塗料、インク、コーティング材、3Dプリンター用材料、電子部品、医療材料など、多岐にわたる産業分野で幅広く利用されています。

2. UV硬化樹脂のメリット・特徴

速硬化性

UV硬化樹脂の最大の特長は、紫外線(UV)を照射するだけで瞬時に硬化が完了する速硬化性にあります。従来の熱硬化性樹脂や溶剤乾燥型の材料と比較して、硬化に要する時間が数秒から数十秒と極めて短いため、生産工程の大幅な短縮と効率化を実現します。

この速硬化性により、生産ラインのタクトタイム(製品1個を生産するのにかかる時間)を劇的に短縮し、生産性の向上に大きく貢献します。特に、大量生産を必要とする分野や、連続的な加工が求められる工程において、そのメリットは顕著です。

環境負荷の低減

UV硬化樹脂は、環境への負荷が低いという点でも注目されています。多くのUV硬化樹脂は、硬化時に揮発性有機化合物(VOC)をほとんど排出しない「無溶剤」または「低VOC」設計となっています。これは、従来の溶剤系塗料や接着剤が硬化時に大量のVOCを大気中に放出し、作業環境の悪化や環境汚染の原因となっていたことと対照的です。

VOC排出量の削減は、作業者の健康保護に繋がり、また大気汚染防止にも貢献します。近年高まる環境規制やSDGsへの取り組みを背景に、環境配慮型の材料としてUV硬化樹脂の採用が加速しています。

省スペース化

UV硬化樹脂の導入は、生産ラインの省スペース化にも寄与します。熱硬化性樹脂のように大型の硬化炉や長時間の乾燥が必要な乾燥炉が不要であり、代わりにコンパクトなUV照射装置を設置するだけで済みます。

これにより、工場内の占有面積を削減できるため、生産ラインのレイアウトの自由度が高まり、スペース効率を向上させることができます。また、硬化装置自体が小型であるため、初期設備投資の抑制にも繋がる可能性があります。

3. UV硬化樹脂のデメリット

紫外線透過性が必要

UV硬化樹脂は、その名の通り紫外線を照射することで硬化反応が進行します。そのため、硬化させたい部分に紫外線が届く環境が必須となります。具体的には、以下のようなケースで問題が生じる可能性があります。

未硬化層の発生

UV硬化樹脂、特にラジカル重合型の樹脂では、硬化時に空気中の酸素が硬化反応を阻害する「酸素阻害」という現象が発生することがあります。これにより、樹脂の表面が完全に硬化せず、べたつきが残る「未硬化層」が生じることがあります。

初期投資

UV硬化樹脂を使用するためには、樹脂材料だけでなく、紫外線を照射するための専用装置が必要となります。これにはUVランプ、UV-LED照射器、それに付随する電源装置や冷却装置などが含まれ、これらの設備導入にはある程度の初期投資が必要となります。

4. UV硬化樹脂の主な種類

アクリル系UV硬化樹脂

アクリル系UV硬化樹脂は、(メタ)アクリレートを主成分とするUV硬化樹脂です。硬化速度が非常に速く、硬度が高いという特徴を持ち、幅広い分野で最も一般的に利用されています。硬化後の塗膜は、優れた耐摩耗性や耐候性を示すものが多いです。

エポキシ系UV硬化樹脂

エポキシ系UV硬化樹脂は、エポキシ化合物を主成分とするUV硬化樹脂です。密着性が高く、硬化収縮が小さいという特徴があります。また、優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を持つため、特に精密な電子部品や光学部品の分野で重宝されます。

ウレタン系UV硬化樹脂

ウレタン系UV硬化樹脂は、ウレタン結合とアクリレート基を併せ持つウレタンアクリレートを主成分とするUV硬化樹脂です。柔軟性と弾性に優れており、硬化後も高い耐衝撃性や耐摩耗性を発揮します。しなやかさが求められる用途に適しています。

5. UV硬化樹脂の主な用途

接着剤

UV硬化樹脂は、数秒から数十秒という短時間で硬化する特性を持つため、生産ラインの効率化に大きく貢献します。特に、熱に弱い部品の接着や、高い透明性が求められる光学部品の接着に適しています。主に、精密機器の組み立て、光学部品、医療機器に接着剤として使用されています。

塗料・コーティング材

UV硬化樹脂をベースとした塗料やコーティング材は、高い耐擦傷性、耐薬品性、耐候性を持ち、美しい仕上がりと長期的な耐久性を提供します。VOC(揮発性有機化合物)排出量の削減にも貢献し、環境負荷の低減に寄与します。主に木工・プラスチック製品、スマホなどのディスプレイ、光ファイバーなどに塗料として使用されています。

インク

UV硬化インクは、速乾性と優れた定着性が特徴で、紙だけでなく、プラスチック、金属、ガラス、木材など様々な非吸収性素材への印刷が可能です。耐水性や耐光性にも優れているため、屋外用途にも適しています。主に、UVインクジェット印刷、スクリーン印刷、UV凸版印刷などに使用されています。

3Dプリンター用材料

UV硬化樹脂は、光造形(SLA、DLP、LCD)方式の3Dプリンターにおいて、高精度な造形と滑らかな表面仕上げを実現する主要な材料です。柔軟性、強度、透明性など、様々な物性を持つレジンが開発されています。主に試作品製作、フィギュア・模型などに使用されています。

電子部品・光学部品

電子部品や光学部品の分野では、UV硬化樹脂が封止、保護、接着、固定など多岐にわたる用途で利用されています。精密な位置決めと信頼性の高い固定が可能であり、小型化・高性能化が進む製品に不可欠です。主に半導体、LED、光通信部品などに使用されています。

医療・歯科材料

医療・歯科分野では、生体適合性、精密性、安全性が特に重視されます。UV硬化樹脂は、これらの厳しい要求を満たす材料として不可欠であり、患者のQOL(生活の質)向上に貢献しています。具体的には、歯科用レジン、歯科模型、カテーテルの接着などに使用されています。

6. UV硬化樹脂を選ぶ際のポイントとは

UV硬化樹脂を選ぶ際は、以下のようなポイントをおさえておくことが大切です。

用途と求める特性:接着強度、耐擦傷性、造形精度など、最終製品に求められる機能を明確にし、優先順位をつけます。

設備適合性:使用するUVランプの種類と波長が樹脂と合致するかを確認します。

接着性・密着性:基材への密着性を確認し、必要に応じてプライマーや表面処理の検討も必要です。

トータルコスト:材料費だけでなくトータルコストで評価し、安定供給や技術サポート体制も確認することが大切です。

7. まとめ:適切なUV硬化樹脂を活用しよう

UV硬化樹脂は、速硬化性、環境負荷の低減、省スペース化といった優れた特性から、現代の製造業において不可欠な材料です。

弊社のUVラベル®は、UV硬化樹脂の紫外線照射にも使用されております。紫外線を受けると色が変化するため、目視で簡単にUV照射確認を行うことができます。

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