UV(紫外線)殺菌とは?仕組みやメリット・デメリットについて解説

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「UV殺菌」は、光の力で細菌やウイルスを除去する衛生管理技術として注目されています。

本記事では、紫外線(UV-C)がどのように微生物のDNAを破壊し、殺菌効果を発揮するのか、その仕組みを分かりやすく解説しています。

家庭での利用から医療現場、食品加工、水処理など、幅広い用途での活用例を知り、安全で効果的なUV殺菌の知識を深めましょう。

 


1. UV殺菌とは

UV殺菌とは、特定の波長の紫外線を照射することで、細菌やウイルス、カビなどの微生物のDNAやRNAを破壊し、その増殖能力や感染能力を失わせる(不活化させる)物理的な殺菌方法です。化学薬品や熱を使わないため、対象物への影響が少なく、広範囲での利用が可能です。

2. UV殺菌の仕組み

UV-Cの作用機序

UV殺菌は、紫外線の中でも特に波長が短いUV-C(深紫外線)を利用した殺菌方法です。このUV-Cが微生物のDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)に直接作用し、その構造を変化させます。具体的には、紫外線エネルギーがDNAやRNAの塩基(特にチミンやシトシン)に吸収されることで、隣接する塩基同士が異常な結合(二量体形成)を起こします。

この二量体形成により、微生物は遺伝情報の複製やタンパク質の合成ができなくなります。結果として、微生物は増殖能力を失い、病原性を発揮できなくなります。これを不活化と呼びます。UV殺菌は、微生物を物理的に破壊するのではなく、その生命活動を停止させることで殺菌効果を発揮します。

UV殺菌の効果を左右する要素

UV殺菌の効果は、紫外線照射量(UV線量)に大きく依存します。UV線量とは、紫外線強度と照射時間の積で決まるもので、十分な線量がなければ、微生物のDNAやRNAに十分な損傷を与えられず、期待する殺菌効果は得られません。

また、殺菌対象となる微生物の種類によって、紫外線に対する感受性が異なります。細菌、ウイルス、カビ、酵母など、それぞれの微生物が持つDNAやRNAの構造、細胞壁や外膜の有無によって、必要なUV線量が変動します。一般的に、ウイルスは細菌よりも高い線量が必要な場合があります。

3. UV殺菌のメリット

化学薬品不要で安全性が高い

UV殺菌は、化学薬品を一切使用しないため、殺菌対象物に有害な残留物が残りません。これにより、食品や飲料、医療器具など、口に入れたり肌に触れたりする製品の殺菌においても、人体への安全性が高く保たれます。

また、薬品の購入、保管、廃棄といった手間やコストが不要になり、環境への排水負荷も軽減されるため、持続可能な衛生管理手法として注目されています。

即効性と広範囲な殺菌効果

UV殺菌は、紫外線が微生物のDNAに直接作用するため、細菌、ウイルス、カビ、酵母など多種多様な微生物を短時間で広範囲に不活性化する高い殺菌効果を発揮します。

また、微生物が紫外線に対する耐性を獲得するリスクが極めて低いため、化学薬品による殺菌で問題となる耐性菌の発生リスクを抑え、長期的に安定した殺菌効果を期待できるという大きな利点もあります。

対象物への影響が少ない

UV殺菌は、非加熱処理であるため、殺菌対象物の温度を大きく上昇させることがありません。この特性により、熱に弱い液体や食品、医薬品などの殺菌において、本来の味、臭い、色、栄養成分などを損なうことなく衛生管理が行えます。製品の品質を維持しながら安全性を高められるため、多くの分野で採用されています。

運用・維持管理の容易さ

UV殺菌装置は、比較的シンプルな設備と省スペース性が特徴です。大規模な工事が不要で導入しやすいため、既存システムへの組み込みや小規模施設にも適しています。

運用・維持管理も容易で、主なメンテナンスはUVランプの定期交換と照射窓の清掃です。薬品の購入・廃棄費用もかからないため、ランニングコストも低く抑えられ、経済的な運用が可能です。

4. UV殺菌のデメリット

人体への影響

UV-Cは微生物のDNAを破壊する強力な紫外線で、目や皮膚への直接曝露は避ける必要があります。

皮膚に当たると日焼けに似た炎症(紅斑)を引き起こし、長時間の曝露は皮膚の老化促進や皮膚がんのリスクを高める可能性があります。

また、目に直接当たると電気性眼炎(雪目)と呼ばれる角膜の炎症を引き起こし、痛みや視力低下、重度の場合には白内障のリスクも考えられます。

物質への影響と劣化

UV-Cは微生物だけでなく、様々な物質にも影響を与え、劣化や変質を引き起こす可能性があります。

特に、プラスチックやゴム製品は、長時間の紫外線曝露により変色、硬化、ひび割れ、強度低下などが生じやすく、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレン(PE)などが影響を受けやすいです。

また、繊維製品は色あせや変色を起こし、塗料、インク、一部の接着剤、医薬品、化学物質なども劣化・変質する可能性があります。そのため、UV殺菌装置導入時は、殺菌対象物や周囲の環境に使用されている素材を確認し、劣化リスクを考慮することが重要です。

5. UV殺菌の用途

水処理におけるUV殺菌

UV殺菌は、水中の微生物を効率的に不活化できるため、飲料水、生活用水、プール・浴場、工場・医療排水など、様々な水処理プロセスで広く活用されています。特に、塩素処理では除去しにくい薬剤耐性菌やクリプトスポリジウムにも効果を発揮するのが大きな特長です。

空気殺菌におけるUV殺菌

空気殺菌では、空気中に浮遊する細菌、ウイルス、カビの胞子などを不活化し、空気の質を改善します。特に、高い衛生レベルが求められる医療施設(手術室、病室など)やクリーンルーム(半導体・製薬工場)、食品工場・厨房施設で空気感染リスク低減や品質保持に貢献しています。また近年は家庭用空気清浄機やエアコンにも搭載され、室内の浮遊菌・ウイルス・アレルゲン除去に役立っています。

表面殺菌におけるUV殺菌

表面殺菌では、物体表面に付着した微生物を直接不活化します。非接触で処理できるため、熱や化学薬品に弱い素材にも適用可能です。

医療器具や実験器具の迅速な滅菌、食品加工ラインや調理器具の除菌による二次汚染防止、さらにはスマートフォンや歯ブラシといった日用品・パーソナルケア製品の非接触除菌にも広く普及し、安全で衛生的な環境維持に貢献しています。

その他のUV殺菌の用途

上記の主要な用途以外にも、UV殺菌技術は多岐にわたる分野で応用されています。

農業・園芸分野

農作物の病害対策として、植物工場での水耕栽培水の殺菌や、温室内の空気殺菌に利用され、病原菌の拡散を抑制します。

紙幣・硬貨の除菌

金融機関やATMなどで、不特定多数が触れる紙幣や硬貨の表面除菌にUV殺菌装置が利用されることがあります。

美容・理容分野

美容室や理容室では、ハサミ、コーム、タオルなどの器具の衛生管理のためにUV殺菌器が用いられます。

6. まとめ:UV殺菌をうまく使おう

UV殺菌は、紫外線を利用して微生物のDNAを破壊し、不活化させる物理的な殺菌方法です。薬剤を使用しないため、耐性菌発生のリスクがなく、環境負荷が低い点が大きなメリットです。

UV照射を監視するUVラベル®は、UV殺菌装置の適切な運用管理をサポートし、安全対策にも貢献しています。

詳細は下記をご覧ください。

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